HERMONY日本のバイエル企業広報誌

BAYER

コンシューマーヘルス日本代表 植田あゆみ Profile/豪・クイーンズランド大卒。2006 年にオーストラリアのバイエル入社、2010年にコンシューマー事業ニュージーランド代表就任、2012年シンガポールでリージョン代表、2014年7月バイエル薬品株式会社コンシューマーケア事業部長。2016年1月から現職

コンシューマーヘルス部門4年目の展望

2014年にコンシューマーヘルス部門が新設されて4年。若い部門は次々とイノベーティブな施策にチャレンジし、早くから実績を重ねてきた。「2025年までにコンシューマーヘルス市場でトップ10入り」を目標に掲げる部門の現状とこれからの展望をリポートする。

“Empowerment”をキーワードに

コンシューマーヘルス部門の躍進は目覚ましい。プレナタル*1 サプリメント「エレビット®」は産婦人科・婦人科医師推奨No.1*2を獲得、販売は前期比700%にまで急伸した。腟カンジダの再発治療薬「エンペシド® L」*3も、短期間のうちにカテゴリーにおけるマーケットシェアNo.1の座を獲得。女性の悩みに耳を傾け、その健康とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指したさまざまな取り組みには、社会的反響も大きかった。部門設立と同時に代表に就任した植田あゆみは、4年を振り返ってこう語る。

「日本の市場を見たとき、特に女性の健康に関して、消費者が満足していない未充足のニーズがあることに気づきました。例えば腟カンジダという頻繁にみられる感染症がありますが、これについて女性に向けた情報が不足していました。一人で悩んだり、不快や不安な思いを引きずったまま生活している人が少なくなかった。私たちは女性が十分な情報を得て主体的に判断し、自らアクションを起こして解決していける環境をつくろうと考え、“Empowering Women”(健康を望むすべての女性に寄り添い、その力になる)が、私たちのキーワードになりました」

これまで日本の市場では取り組まれたことのなかったユニークな施策も積極的に取り入れながら、バイエルでは、正面から腟カンジダを取り上げ、それを語る文化をつくり上げようとしていった。

消費者ニーズをベースに考える

「タブーを打ち破ること、それを躊躇したことはありません」と植田は振り返る。「健康の悩みを、多くの日本人女性が自分の中に抱え込んでいます。私たちのコンシューマーヘルス事業は、ウィメンズヘルスというカテゴリーに貢献できるし、それをしなければならないと思いました。婦人科に行きにくいとか、デリケートなことは口にできないといったことがよくある状況で、私たちは日本の女性たちが情報を得るための他の方法を模索しました」

加えて日本のコンシューマーヘルス市場は、カテゴリーの売上額が小さければ、マーケットとして重要視しないという傾向があった。そこにも違和感があったという。

「日本での主なカテゴリーは鎮痛剤や風邪薬です。確かに売り上げ規模は大きい。しかし私たちは、今の売り上げではなく消費者のニーズをベースに市場を捉え、将来の成長をみていきました。ウィメンズヘルスは、今は小さなカテゴリーかもしれませんが大きく伸び、拡大していく可能性があると思いました」

“Can Do Attitude” やればできる

“Empowerment”というコンセプトは、消費者に向けられているだけではなかった。コンシューマーヘルスを担う組織づくりにおいても、この考え方が重要だと植田は考えてきた。部門の一人一人が力をつけ、自信を持って主体的に業務に取り組むところに、新しい発見や事業の前進があるからだ。

「私たちは“Can Do Attitude”というマインドで歩いてきました。そういう人がチームに加わってくれました。大事なのは考え方です。不可能にみえる状況でも挑戦し、いろいろ試してみようという気概で取り組んでいく職場環境を整えること。日本におけるコンシューマーヘルス事業を成功させるためには、私たちにとっても“Empowerment”は重要なキーワードです」

2025年までにコンシューマーヘルス市場でトップ10を目指すバイエル。女性の健康を改善していくために、その歩みをさらに力強く進めていく。

*1 妊娠準備期間および妊娠期間
*2 2017年3月当社インターネット調査 調査対象:産婦人科・婦人科医師170人
*3 第1 類医薬品 製造販売元:佐藤製薬株式会社

コンシューマーヘルス部門のリーダーシップチームのメンバー(2018年1月現在)。 国籍や、これまで活躍した業界など、社員たちが持つさまざまなダイバーシティ(多様性)が部門の大きな力に

It has been four years now since the Consumer Health Division was first established in 2014. The fledgling division has shown good early results by tackling a string of innovative initiatives. Here we report on the current state and future aspirations of the division, which has the goal of top ten in the Consumer Health market by 2025.

“Empowerment” is Key

The progress of the Consumer Health Division has been nothing short of remarkable. The prenatal supplement Elevit is the No. 1 recommended supplement by obstetricians and gynecologists, and sales have risen sharply, by as much as 700% year on year. Empecid L, a treatment for vaginal yeast infections, has also captured the top share in its category in a short period of time. The division listens closely to the concerns of women, and its various initiatives to enhance health and quality of life have been very well received by the general public. Ayumi Uyeda, who was appointed General Manager of the division when it was established, reflects on the past four years.

“In looking at the Japanese market,” she says, “We noticed there were areas in which consumers were not satisfied and where there were unmet needs in the market, particularly in areas of women’s health. For example, vaginal yeast infections can be quite common, but there was a lack of information available to women, and many women were leading their lives with unresolved discomfort and anxiety, and were alone in their concern. We realized there was a need to create an environment to enable women to obtain adequate information on their own, act for themselves and solve the problem, so ‘Empowering Women’ (providing all women with the ability to take charge of their health and help their families to lead healthy, happy lives) became our keyword.”

Bayer worked to create a culture of directly addressing and discussing vaginal yeast infections while also actively incorporating unique initiatives not used previously in the Japanese market.

Considering Consumer Needs

“We did not hesitate to break taboos,” Uyeda recalls. “Many Japanese women have health concerns that they keep to themselves. We in the consumer health business are able to contribute to women’s health and we felt we had an obligation to help women. Finding it difficult to go to the gynecologist or to speak about delicate matters is quite common, so we had to find other ways to get the information to women.”

In addition, there was a tendency in Japan’s consumer health market to ignore categories with limited sales, but this also didn’t seem right, Uyeda says. “The large categories in Japan are analgesics and cold medicines, and sales here are substantial, but we saw the potential for future growth by considering consumer needs rather than current sales. Women’s health may be a small category now, but it has the potential for significant growth and expansion.”

Can-Do Attitude and Mindset

The concept of “Empowerment” is not only directed at consumers, but also within our organization. This same approach is important, because new discoveries and progress in business are the product of each division member being empowered to confidently and independently engage in their work. “We proceeded with a can-do attitude and mindset, and others of this mindset were added to the team. The approach is everything. We wanted a workplace infused with an experimental spirit and a willingness to take on challenging situations even when they seem impossible. To make the consumer health business successful in Japan, ‘Empowerment’ will continue to be the key for us ”.

Bayer is aiming to be in the top ten in the consumer health market by 2025 and plans to push forward even more powerfully with the purpose of improving the health of women.


コンシューマーヘルス部門のマーケティング部長のマーク・ホファとシニアブランドマネジャーの栗原宏枝

私たちは新たなカルチャーの創造を目指している

「恥ずかしいこと」ではない

世界のマーケットで大きな成功をもたらしている腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることはほとんどなかった。なぜこの薬が生かされないのか――コンシューマーヘルス部門のシニアブランドマネジャー栗原宏枝は「エンペシドL」担当として改めて考えていた。

「腟カンジダの原因となるカンジダ菌は、健康な人の皮膚や粘膜にも必ず存在する常在菌です。これが疲労やストレスなどの要因で、腟内で異常増殖すると腟カンジダを発症します。常在菌ですから、誰もが持っており、実際、10代から50代女性の約5人に1人は腟カンジダを経験しているという調査もあります。ところが、日本では恥ずかしいという気持ちが先行し、婦人科の診察を受けることにも抵抗があり、友人にも言えないという状況があります。このカルチャーを変えなければ、いくら『エンペシドL』を露出しても女性とはつながりません。私のミッションは『エンペシドL』を売ることではなく、腟カンジダについて語りにくいという社会状況を変えることにありました」

自分の体にきちんと向き合うために

一人で好きな時間に読むことができるWEBコンテンツは非常に有効だと栗原は感じていた。「腟カンジダ」に関連してどんな検索や書き込みが行われているのか、それを分析して、あらゆる回答を用意した。ページデザインも、大人の女性を意識しながら、明るく落ち着いたトーンでまとめた。さらに、女性に人気の高い漫画家、花津ハナヨさんを起用して漫画を企画・製作。誰もが身近に受け止めることができるストーリーに、伝えたいと思うさまざまな情報を乗せた。「WEBサイトには非常に多くのアクセスがあり、すぐに検索サイトで最上位にランクされました。月間ページビューも100万の大台に乗り、反響は想像以上でした」

続いて栗原は、テレビコマーシャルの製作に取り組む。上品な大人の女性を意識して舞台女優、岩井七世さんを起用。他方では医師に執筆を依頼し『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』を出版した。さらにこれらと並行して、かわいらしいキャラクター「キャンディーダと愉快な仲間たち」を考案。常在菌として誰の体にもいる仲間であることをアピールすることが狙いだ。「テレビでは上品に、WEBサイトではわかりやすく、書店では専門的に、そしてキャラクターでコミカルに親しみやすく……さまざまな手法を組み合わせ、腟カンジダを身近なものとして示し、リテラシーを高めてもらうことを考えました。パッケージデザインも女性に親しみやすいものに変えています」。間もなく「エンペシドL」の販売は急カーブで上昇。カテゴリーNo.1の地位を獲得した。

コミュニケーションの必要性

医療機関で診断を受けた人は、処方された薬を服用しながら健康体を取り戻していく。医薬品の果たす役割は大きい。他方で、医療機関の受診を躊躇したり、OTC医薬品(一般用医薬品)の購入や使い方に不安があるという一般の消費者が存在している。医師に出会わない人たちとコミュニケーションを取り、的確な情報や知識を伝えられるのは誰なのか?「病院で診療を受ける前の人にアプローチできるのは、消費者との広い接点を持っているコンシューマーヘルス部門です。女性が自分の体のことを深く知り、自信を持って行動していける――そういう社会をつくりたいと思っています」と栗原。

さまざまなタブーに果敢に挑戦する「エンペシドL」プロジェクト。それは、コンシューマーヘルス部門の任務とは何かということを、改めて示すものでもあった。

Working to Create a New Culture

Empecid, a treatment for vaginal yeast infections, had succeeded on the global market but was struggling in Japan. Hiroe Kurihara, Senior Brand Manager in the Consumer Health Division, thought about why. “Candida, which causes the infection, occurs in healthy people in the skin and mucous membranes. But because of overwork and stress, candida overgrowth can occur and cause a vaginal infection. Everyone has candida, but in Japan women would sometimes be embarrassed to tell their gynecologist or even their friends. We had to change the culture.”

Kurihara thought easily accessible online content would be effective. The team analyzed searches and posts related to “vaginal yeast infection” and prepared every conceivable response. In addition, Hanayo Hanatsu, a manga artist popular with women, was hired to produce a manga series.

Key facts were put into a story familiar to everyone. The website was a huge success, and monthly page views exceeded one million. The team next produced TV commercials, books and a mascot. “In good taste on TV, clear on the web, specialized in books, and comical for the mascot— we combined approaches and presented candida as a familiar presence while raising literacy.” In no time sales of Empecid L increased sharply and ranked No. 1 in the category.

FIVE KEYWORDS

独自の視点で新しい市場を開拓するコンシューマーヘルス部門。部門の特性を読み解く、5 つのキーワードをご紹介。

Diversity
ダイバーシティ

議論はいつも白熱し、そして前に進む

コンシューマーヘルス部門には、さまざまな国のさまざまな企業で、多くの成功体験を得てきた人たちが集まっている。ダイバーシティ(多様性)は、この部門の大きな特長だ。オーストラリア、中国、韓国、スイス、アメリカなど国籍は多岐にわたり、男女比も60%対40%と拮抗している。出身業界も、薬品や化粧品、食品に限られるのではなく、ファッション、テクノロジー、広告など、あらゆるところに広がっている。当然、考え方やアプローチの仕方、ビジネスモデルなど、バックグラウンドもまったく異なる。「だからおもしろい」と、部門のメンバーは口をそろえる。「『これをやってみたら?』という提案に『前例がない』『きっと反対される』というネガティブな言葉は決して返ってきません。『おもしろそうだね』『やってみよう』と、議論は白熱しながら前に進んでいきます」

メンバーは違いを認め合い尊重し合っているからこそ、対立することもあるが、感情的になる場面はない。むしろ違いを発見することは喜びであり、対立は新しいものの誕生のきっかけになる。そしてこの多様性を支え、ひとつにまとめているのが“実現したい”という強い意思と理念だ。日本におけるヘルスリテラシーの向上を図る――そのためにチームは固く結束している。

1月17日に行われたコンシューマーヘルス部門のタウンホールミーティングのひとコマ。戦国時代の鎧を模したコスチュームをまとい、チームに分かれてミニゲームを開催。部門のメンバーが全員参加する貴重な機会となり親睦を深めた


Changing the Mindset
チェンジング ザ マインドセット

プレナタル*サプリメント「エレビット」

“常識”を変え、タブーに挑む

「常識への挑戦」は、コンシューマーヘルス部門の基本的なスタンスだ。「エレビット」の成功も、医師と流通と、そして私たちの常識を変えることによって可能になったものだった。「エレビット」は、妊活・妊娠中に必要な18 種のビタミン・ミネラルを配合したマルチサプリメントとして世界中で高い支持を得ている。しかし日本での販売にはいくつかの困難があった。例えばサプリメントに有効な販売チャネルである独自のオンラインショップを持っていなかった。しかしバイエルは産婦人科や婦人科の医師との信頼関係が厚い。当然、医師のサポートを得ながらの販売推進が有力な手段になるのだが、問題は「エレビット」が医薬品ではなく予防効果を持つサプリメントであるということだった。「医師が予防サプリメントを扱うのか?」「それを医師にお願いするのか?」――医師にも、そして営業側にも抵抗感があった。だが、二分脊椎症を含む神経管閉鎖障害の発生原因のひとつに葉酸の不足があり、葉酸の摂取が発症リスクの低減に寄与することは明らかになっている。しかも、米国やドイツなど欧米諸国では減少傾向にある二分脊椎症が、日本においては2010年において10,000人当たり6人近く(0.06%)と、発症率の低下傾向はみられていない。部門では、二分脊椎症予防の意義を医師に丁寧に伝える活動を展開した。そうすることによって「予防」「サプリメント」には関知しないという医師のマインドセットを徐々に変えることに成功した。現在「エレビット」は、医師推奨No.1のマルチサプリ**として販売実績を劇的に伸ばしている。

* 妊娠準備期間および妊娠期間
** 2017年3月当社インターネット調査 調査対象:産婦人科・婦人科医師170人


Ideation Process
アイディエーションプロセス

見えていないニーズに照準を当てる

バイエルの医薬品が、徹底した安全管理の下、質の高い研究開発プロセスを経て市場に投入されていることは言うまでもないが、コンシューマーヘルスビジネスという視点では別の要素も必要になる。それは「顕在化した症状に対する治療薬」ではなく、「まだ決定的に顕在化していない不満や不安、あるいはありたい自分とのギャップ」といった、消費者の心の中にあるアンメットニーズに応えることだ。見えていないもの、不確実なものに対してスポットライトを当て、そこにニーズを設定し、バイエルの膨大なグローバルアセットから、的確に応えられるものを構想していく。そのことが求められている。“引き算”で要素を絞りながら、同時に日本の規制に合わせて製品を新たに設計し、きれいな“クリスタル”として仕上げていくということだ。部門ではアイディエーションプロセスと呼んでいる。これこそ、コンシューマーヘルス部門における製品開発の基本的なスタイルである。


Partnership
パートナーシップ

日本市場に合わせた柔軟な販売戦略

コンシューマーヘルス部門の販売におけるキーワードはパートナーシップだ。製品の製造から販売までのバリューチェーンをみたとき、強力な研究開発と製造拠点と製品群があり、それを輸入するルートを確保していても、マーケティングを進め、消費者とコミュニケーションを取りながら販売していくという最終場面で、まだその力は十分ではない。日本の市場に参入して4年の歴史しか有さず、市場におけるプレゼンスは決して大きくはないため、それをいかに補完するか――そこで重要視しているのが国内医薬品会社とのパートナーシップだ。アレルギー性疾患治療剤「クラリチン®」などはパートナー会社と販売提携している。バイエルの高品質で価値の高いOTC医薬品(一般用医薬品)をいかに早く日本の消費者の元に届けるか、そこで生きるのがパートナーシップだ。

アレルギー性疾患治療剤「クラリチン」の日本版パッケージと海外版パッケージ


Global Asset
グローバルアセット

世界のマーケットでバイエルは第2位

バイエルは世界のOTC医薬品(一般用医薬品)市場で第2 位のポジションを占める。鎮痛剤「アスピリン®」「Aleve™」をはじめ、点鼻薬「Afrin™」、皮膚薬「Bepanthen™」、足のケアブランド「Dr.Scholl’s™」やスキンケア「Coppertone™」などを保有。さらに胃腸薬や風邪薬、インフルエンザ関連の幅広いOTC 製品群を持っている。これらの強力なグローバルアセットの中には、日本のメジャープレーヤーである製薬会社が必要とするソリューションも含まれている。強力なポートフォリオを武器に、マーケティングや販売チャネルに工夫を加えながら、コンシューマーヘルス部門は日本におけるビジネスをさらに強力に推進していこうとしている。

Bayer Global Products from Consumer Health

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Photo: Tetsuo Kitagawa
Illustration: Emi Yamaguchi (asterisk-agency)

L.JP.COM.04.2018.1314